相続登記は自分でできる?手続の流れと司法書士に依頼した方がよいケース

相続登記は自分でできる?手続の流れと司法書士に依頼した方がよいケース

相続登記は、必ず司法書士に依頼しなければならない手続ではありません。

相続人ご本人が戸籍などの必要書類を集め、登記申請書を作成して法務局へ申請することもできます。

そのため、

「費用を抑えるために自分でやってみたい」
「自宅の相続だけなので、それほど難しくないのでは?」

と考える方もいらっしゃるでしょう。

実際、相続関係が単純で、不動産も少なく、必要な書類がそろっている場合には、ご自身で手続できるケースがあります。

一方で、戸籍を集め始めてから相続人が想定より多いことが分かったり、亡くなった方の住所が登記簿とつながらなかったり、私道の持分を見落としていたりすることもあります。

この記事では、相続登記を自分でする場合の流れ、自分で進めやすいケース、司法書士への依頼を検討した方がよいケースを解説します。

相続登記は自分で申請できます

相続登記には、司法書士へ依頼しなければならないという決まりはありません。

不動産を相続した本人が、自分で法務局へ登記申請をすることができます。

申請方法には、主に次の方法があります。

  • 法務局の窓口へ申請書を提出する
  • 郵送で申請する
  • オンラインで申請する

法務局のホームページには相続登記の申請書様式や記載例も公開されています。

比較的単純な相続であれば、それらを参考にしながらご自身で手続することも可能です。

ただし、申請書を書けることと、「その相続についてどの登記をすればよいか」を正しく判断できることは別の問題です。

相続人、不動産、遺言書、遺産分割の内容などを最初に整理することが重要です。

自分で相続登記をする場合の基本的な流れ

一般的な遺産分割協議による相続登記では、おおむね次の順番で進めます。

1.亡くなった方の不動産を調べる

まず、亡くなった方がどの不動産を所有していたか確認します。

手元にある次のような資料を確認しましょう。

  • 固定資産税の納税通知書・課税明細書
  • 権利証
  • 登記識別情報通知
  • 登記事項証明書
  • 不動産の売買契約書

ここで注意したいのが、固定資産税の課税明細書にすべての不動産が載っているとは限らないことです。

道路として利用されている私道や非課税の土地、共有持分などが漏れていることがあります。

最初に不動産を正確に把握しておかないと、一部だけ相続登記をして後から追加申請が必要になる可能性があります。

2.遺言書がないか確認する

遺言書がある場合とない場合では、必要書類や登記の方法が変わります。

自宅で保管されている遺言書だけでなく、公正証書遺言や法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用した遺言書がないかも確認します。

遺言書があるのに相続人同士で先に遺産分割を進めてしまうと、手続を整理し直さなければならないことがあります。

3.戸籍を集めて相続人を確定する

遺言書がなく遺産分割協議をする場合には、一般的に亡くなった方の出生から死亡までの戸籍、除籍、改製原戸籍などを集めます。

さらに、相続人の現在の戸籍も必要です。

戸籍を読むと、

  • 前婚で子どもがいた
  • 養子がいた
  • 相続人と思っていた方が既に亡くなっていた

といったことが判明する場合があります。

遺産分割協議は法定相続人全員で行う必要があるため、「家族として知っている人だけ」で話合いを進めることはできません。

4.誰が不動産を取得するか決める

遺言書がない場合には、相続人全員で遺産分割協議を行い、不動産を誰が取得するか決めます。

話合いがまとまったら、遺産分割協議書を作成します。

不動産については、所在や地番、家屋番号などを登記記録に沿って正確に記載する必要があります。

普段使用している住所である「住居表示」と、土地の「地番」は別のものです。

5.必要書類をそろえる

遺産分割協議による一般的な相続登記では、例えば次のような書類を準備します。

  • 亡くなった方の出生から死亡までの戸籍等
  • 亡くなった方の住民票の除票または戸籍の附票
  • 相続人の戸籍
  • 不動産を取得する方の住民票
  • 遺産分割協議書
  • 必要となる印鑑証明書
  • 固定資産税の課税明細書または固定資産評価証明書
  • 登記申請書

実際に必要となる書類は、相続の内容によって異なります。

6.登録免許税を計算する

相続による所有権移転登記には、原則として登録免許税がかかります。

基本的な税率は、不動産の固定資産税評価額の0.4%です。

例えば、対象となる不動産の固定資産税評価額が合計2,000万円であれば、原則として登録免許税は8万円となります。

ただし、評価額の端数処理が必要になるほか、一定の要件を満たす土地について登録免許税が免税になる制度もあります。

単純に「評価額×0.4%」だけで終わらない場合があるため注意が必要です。

7.登記申請書を作成して法務局へ申請する

書類がそろったら、登記申請書を作成します。

主に、

  • 登記の目的
  • 登記原因とその日付
  • 相続人の氏名・住所
  • 課税価格
  • 登録免許税
  • 不動産の表示

などを記載します。

申請先は、相続人の住所を管轄する法務局ではなく、不動産の所在地を管轄する法務局です。

8.補正に対応する

申請後、記載の誤りや書類の不足があれば、法務局から修正や追加書類の提出を求められることがあります。これを「補正」といいます。

補正できる内容であれば修正して登記を進められますが、申請内容自体に問題がある場合には、いったん申請を取り下げてやり直さなければならないこともあります。

自分で相続登記をしやすいケース

次の条件が多く当てはまる場合には、ご自身で相続登記を進めやすいと考えられます。

  • 相続人が配偶者と子どもだけなど、相続関係が単純
  • 相続人全員が手続に協力的
  • 遺言書や遺産分割について争いがない
  • 不動産が自宅の土地と建物程度
  • 不動産の所在地が一つの法務局の管轄内
  • 亡くなった方の住所と登記簿上の住所が容易につながる
  • 戸籍を自分で集めることができる
  • 書類作成や役所とのやり取りが苦にならない
  • 手続を急いでいない

特に、ご自身で書類を調べることに抵抗がなく、平日に役所や法務局へ問い合わせる時間を確保できる方であれば、自分で行うという選択肢も十分あります。

自分で行うメリット

司法書士報酬を節約できる

最大のメリットは、司法書士へ支払う報酬を抑えられることです。

ただし、登録免許税、戸籍等の取得費用、郵送料などの実費は、自分で申請する場合でも必要です。

司法書士に依頼しないから相続登記が無料になるわけではありません。

相続や不動産登記について理解できる

戸籍を読み、不動産の登記記録を確認し、申請書を作成することで、ご自身の相続関係や不動産について理解が深まるという面もあります。

時間に余裕があり、手続そのものを経験してみたい方にはメリットでしょう。

自分で行う場合のデメリット

書類収集に時間がかかる

相続登記では、申請書そのものより、申請する前の調査や書類収集に時間がかかることがあります。

出生から死亡までの戸籍が複数の市区町村にまたがっていたり、兄弟姉妹や甥・姪まで相続人になる場合には、必要な戸籍が多くなります。

不動産の漏れに気付きにくい

自宅の土地と建物だけだと思っていたところ、私道持分や共有地が別に存在することがあります。

一部の不動産だけ相続登記をすると、後日もう一度申請することになります。

法的判断が必要になるケースがある

法務局では、登記申請書の作成に必要な一般的な案内を受けることができます。

一方、

「この遺産分割の内容で問題ないか」
「この遺言書は有効か」
「どのように遺産を分けるべきか」

といった個別の法律判断や遺産分割の内容そのものを決めてもらうことはできません。

「法務局へ行けば相続についてすべて教えてもらえる」というわけではない点には注意が必要です。

司法書士に依頼した方がよいケース

次のような場合には、自分で進めるより、最初から司法書士へ相談した方が結果として負担が少なくなることがあります。

1.兄弟姉妹や甥・姪が相続人になる

亡くなった方に子どもがおらず、両親なども既に亡くなっている場合には、兄弟姉妹が相続人になることがあります。

さらに兄弟姉妹が先に亡くなっていれば、その子である甥・姪が相続人になる場合があります。

このようなケースでは、戸籍収集の範囲が広くなりやすく、相続人の確定に手間がかかります。

2.何代も前の名義が残っている

父ではなく祖父や曽祖父の名義のままになっている不動産では、途中で発生した相続を順番に確認しなければなりません。

相続が何度も重なる「数次相続」では、現在の相続人が多数になる場合があります。

3.亡くなった方の住所が登記簿と一致しない

登記簿上は昔の住所のままで、死亡時の住所まで何度も転居しているケースがあります。

戸籍の附票などで住所の移転をつなげられればよいのですが、古い記録が廃棄されて取得できない場合には、別の資料を組み合わせて対応する必要があります。

4.私道や共有持分などがある

自宅の土地と建物だけでなく、

  • 私道持分
  • ゴミ置場の共有持分
  • 集会所の敷地持分
  • 農地
  • 山林

などを所有している場合があります。

相続登記から漏らさないためには、不動産の調査が重要です。

5.遺言書がある

遺言書があれば簡単とは限りません。

遺言の文言、遺言の種類、不動産を取得する方が相続人か相続人以外か、遺言執行者がいるかなどによって登記の方法が変わることがあります。

6.相続人の一人が未成年者などである

相続人の中に未成年者がいて、その親も共同相続人である場合などには、利益相反の問題から特別代理人の選任が必要になることがあります。

通常の遺産分割協議とは異なる手続が必要になるため、早めの確認が必要です。

7.不動産を早く売却したい

相続した不動産を売却する場合、原則としてその前提として相続登記を完了させます。

既に買主を探している場合や売却期限が決まっている場合に、自分で登記を始めて途中で書類不足が判明すると、売却スケジュールに影響する可能性があります。

8.預貯金の相続手続もまとめて行いたい

不動産だけでなく、複数の銀行や証券会社の相続手続もある場合には、それぞれ必要書類を提出することになります。

法定相続情報一覧図などを活用しながら、全体の手続をまとめて進める方が効率的なケースがあります。

途中まで自分で進めてから司法書士に依頼しても大丈夫?

もちろん可能です。

例えば、

「戸籍までは自分で集めたが、その先が分からない」
「申請書を作ろうとして止まってしまった」
「法務局から補正の連絡が来た」

という段階から司法書士へ依頼することもできます。

取得済みの戸籍や住民票などが利用できる場合には、それを確認したうえで不足書類だけ追加することができます。

ただし、遺産分割協議書を既に作成している場合には、その内容で相続登記に使用できるか確認が必要です。

作成済みだからそのまま使えるとは限りません。

司法書士からの実務ポイント

相続登記を自分で行うか迷ったときは、まず次の3点を確認してみてください。

「相続人」「不動産」「住所」の3つです。

  • 相続人が誰か明確か
  • 亡くなった方の不動産をすべて把握できているか
  • 登記簿上の住所と死亡時の住所がつながるか

この3点に問題がなく、遺産分割の内容も明確であれば、ご自身で手続しやすいケースです。

反対に、このうち一つでも「よく分からない」という場合には、申請書を作る前に一度確認することをおすすめします。

相続登記では、最後の申請書よりも、その前提となる相続関係や不動産の調査の方が重要な場合が少なくありません。

法務局へ相談する場合と司法書士へ相談する場合の違い

ご自身で相続登記を行う場合には、法務局が公開している申請書様式や登記手続案内を利用できます。

法務局では、成立している法律関係を前提として、登記申請書を作成するために必要な一般的な案内を受けることができます。

一方、司法書士へ依頼した場合には、個別の資料を確認したうえで、

  • 必要な戸籍の範囲の確認
  • 相続人の調査
  • 不動産の登記状況の確認
  • 遺産分割協議書の作成
  • 登録免許税の計算
  • 登記申請書の作成
  • 法務局への申請
  • 補正への対応
  • 登記完了後の書類確認

まで依頼することができます。

自分でできるかどうかだけでなく、「自分の時間をどこまで使うか」という観点で考えるのも一つの方法です。

自分でやるか迷っている段階でも相談できます

司法書士へ相談したからといって、必ず相続登記を依頼しなければならないわけではありません。

手元にある資料から、

  • 比較的単純な相続なのか
  • 戸籍収集が複雑になりそうか
  • 特殊な登記が必要になりそうか
  • 自分で進める場合に何を準備すべきか

を確認したうえで、ご自身で手続するか依頼するかを判断することもできます。

町田市周辺の相続登記は一灯司法書士法人へご相談ください

一灯司法書士法人では、相続登記について「すべて依頼したい」というご相談だけでなく、「自分でできるケースなのか知りたい」という段階のご相談も承っています。

司法書士が現在の相続関係、不動産、取得済みの書類などを確認し、必要な手続をご案内します。

また、戸籍収集、法定相続情報一覧図の作成、遺産分割協議書の作成から登記申請までまとめてお任せいただくこともできます。

町田市を中心に、周辺地域や遠方にある不動産の相続登記にも対応しています。

平日に時間を取ることが難しい方については、事前のご予約により土日のご相談にも対応しています。

ご相談の際には、すべての書類がそろっていなくても問題ありません。

お持ちであれば、

  • 固定資産税の納税通知書・課税明細書
  • 権利証・登記識別情報通知
  • 既に取得した戸籍
  • 遺言書
  • 登記事項証明書

などをご用意いただくと、状況を確認しやすくなります。

相続登記を自分で行うか司法書士へ依頼するか迷っている方も、お気軽にご相談ください。

※この記事は令和8年(2026年)8月22日現在の法令・制度に基づいて作成しています。相続関係、遺言書の内容、不動産の登記状況などにより必要な手続は異なります。

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